【インタビュー】田所智子さん(戦場体験放映保存の会 事務局次長)-ボランティアだけで作った2600人の戦場体験記録




 

4.一人ひとりの関わりは薄くても、たくさんの人が関われる会にしたい

 

―ありがとうございます。ご活動についてよくわかりました。少し立ち入ったお話を伺いたいのですが、「保存の会」さんの財政はどのような状況でしょうか?

財政は厳しいです。自転車操業ですね(笑)。基本は1000円の年会費と、カンパでの運営です。会費設定は、できるだけ薄くたくさんの人に協力頂きたいということです。会員は約300人ですので、会費だけだと大した額にはなりません。その他に寄付等、年間で200~300万円くらいの予算が回る程度には集まっています。展示会や茶話会の会場は、公共施設を借りて安く抑えるなど努力しています。助成金を取ったらいいんじゃないかという話もあるけど、申請して報告書を書くだけで専門の人が一人必要なくらいの仕事量になってしまうので、なかなか手を出せていません。母体となっている公益社団法人の報告書類作成の仕事だけでもかなり大変な作業量なんです。

 

―ボランティアの数はいかがでしょうか?

ボランティアはもっと増えてほしいですね。やっぱりみんなが経験したほうがいいですね。私自身は200人以上体験を聞いていますけど、200人聞いている人を100人作るよりも、10人聞いている人を1000人作る方がずっと活動としては価値があるじゃないですか。ただそればかり言っていると、運動として効率が悪い、聞き取りの質を維持出来ないから、難しいところですけども。

 

アーカイブスはポータルサイト化していきたい

―あと5年、10年していくと体験を話せる方が限りなく少なくなると思いますが、どのように継承していくかお考えはおありでしょうか?

集めている証言は、インターネット上でアーカイブの形で公開しようとしていて、今はその作りかけ、走りがネット上に電子版としてありますけれども、そこでちゃんと動画を見れるようにしていこうと思っているんです。それを1500~1600人規模にするだけで10年単位でかかるなと思ってはいるのですけれど(笑)。それで誰でもアクセスできるようにはしていくのですが、その一方で、じゃあそれを使いこなして利用してもらえるのか、そのままでは置いておくだけの宝箱みたいになっちゃわないかなみたいな心配はあるんですね。

戦場体験放映保存の会が運営する戦場体験史料館のウェブサイト
戦場体験放映保存の会が運営する戦場体験史料館のウェブサイト。多くの戦場体験記録を閲覧することができる貴重なオンライン資料館となっている。

 

今せっせとイベントやったりしているのは、代わりになるのか分からないけど、少なくとも例えば一回、直接そういう話を聞いた経験があるかないかっていうことが、資料的に残っているものとかを見るうえでも違うんだろうなという気がしています。そういう意味で生のものに少しでも触れてもらえる時期は、それはそれでそういう機会とか場所を提供しないといけないなと思っています。本当は着々とその裏でアーカイブスを作りつつ、イベントもやりつつが理想なんですけど、なんせそんな人手がいないので、イベントをばんばん大きいの組むと、アーカイブ誰も更新してませんみたいな感じになっちゃうのが、悩みの種なんですよ。

 

―活動における課題は何でしょうか?

さっき話した介護施設の獲得ですね。体験を聞く枠をどんどん広げることです。イベントをやりながらアーカイブスを成長させていくのも課題です。アーカイブスは2000何人とか終わらなくても、300人とか500人、ちゃんと定番のものができたら、本当はもう少しポータルサイトみたいなものを作りたいです。

個人で少しずつ証言の記録を持ってらっしゃる方たちとか、音声だけどすごく持っている方とか、それなりに存在は知っています。そういう人たちのものもちゃんと共有できるように、リストだけでもいいので、アーカイブスが参加するのに安心して頂けるような存在になったら、少なくともどこにどういうものがあるかというリストアップみたいなものは、マッピングするようなことはしたいなあと思ってますね。

 



 

戦争を支えた社会のありようを探っていきたい

―体験の聞き取りは今後も息長く続けていかれる予定でしょうか。

そうですね。聞き取りの方はずっと誰かいる限り、というところはあって、元々戦場体験ということで兵士を中心にやってきているところはありますけど、その世代がいなくなったからということだけではなくて、もうちょっと銃後の話も広げたほうがいいだろうなという認識にはなってきています。空襲とか長崎、広島とかはちゃんとやってきている団体があるから、うちが手を出さなくてもということが元々あったんですけれど、生活の部分の話はもうちょっと聞いておけばよかったなという思いはあるんですね。

戦争を支えた社会のありようみたいなものを、その時代の日常生活みたいなものの聞き取りは足りていないので、そういうのがあった方が自分たちが展示とか実際にやっていると、特に兵士の体験は外地のことだから、今の私たちから距離感があると言うことだけではなくて、当時の内地の人から見ても距離感が同じくらいあったのかもしれない。その辺が、送り出す側と出される側と、みんなどういう精神構造があったのか。見えるような、見えないような感覚なので、もうちょっとそこは聞き取りでなんとか埋めたいなっていう欲求が出てきました。

あと、おそらく戦争孤児の人たちへの聞き取りと言うのはこれからだと思います。80代頭になったくらいだと思いますが、兵士の体験も80くらいになって話しやすくなった、話さなければいけないと思うようになったという方が多かったので、年齢的にこれから話し出される時期だと思いますね。

 

―どうもありがとうございました。

 

プロフィール

田所 智子(たどころ さとこ)

1966年8月6日生まれ、兵庫県出身。大阪大学医学部卒業、医学博士。17歳の夏、「老子」に亡祖父の戦時中の書き込みを見つけて「国民が皆騙されて付いて行った訳ではなかった」と気付く。1993年、社会党の変容に思い詰め、故上田哲氏に手紙を送ったところ返事が来たのをきっかけに、氏を中心とする運動に参加。2004年、「戦場体験放映保存の会」設立に参加、以来事務局次長。200人以上から聞き取りをしている。共著「戦場体験キャラバン」(彩流社)。

 

リンク

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Twitter @JvvapJP

 

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